トラックドライバーの世界には、「横乗り期間で全てが決まる」という言葉があります。
新人がどんな先輩に教わるかで、その後の運転スタイルも、人間関係も、キャリアの方向性も、ガラッと変わるからです。
今回は、僕の現場で実際にあった話。
とても素直で礼儀正しかった新人が、たった1ヶ月の横乗り期間で“完全に別人”になってしまったエピソードを紹介します。
この記事では、
- チンピラ気質の先輩による“負の教育”の実態
- 新人ドライバーが勘違いしていくプロセス
- 運送会社にとって「誰に新人を任せるか」がどれだけ重要か
をリアルにお伝えします。
礼儀正しく真面目だった新人ドライバー
うちの会社に入ってきた新人くんは、年下ながらとても礼儀正しいタイプでした。
朝は元気に挨拶、「よろしくお願いします!」の声も大きくて気持ちいい。
メモ帳を片手に、教わったことを一つひとつ丁寧に書き留める姿に、「これは良いドライバーになるぞ」と、誰もが思っていました。
本当に真面目で、配車マンにも低姿勢で対応し、現場でも素直な受け答え。
“育てがいのある新人”というのは、まさにこの子のためにある言葉だと思ったほどです。
横乗りに入った先輩は、まさかの“チンピラ系”
問題は、横乗り期間を担当した先輩ドライバーでした。
この先輩、技術はあるものの、とにかくクセが強い。
一言で言うなら「昭和のチンピラ系ドライバー」。
- 配車マンに対してマウントを取ろうとする
- 荷主に対しても同様
- 教え方は「見てりゃ分かるだろ」
口調も態度も荒っぽく、年上にもタメ口。
運転技術はあるけど、言葉にトゲがあるし、空気も読まない。
でも新人くんは、そんな先輩に「逆らっちゃいけない」と思っていたのでしょう。
黙って「はい、わかりました…」とだけ返事をして、毎日その先輩の横に乗っていました。
たった1ヶ月で“完全にチンピラ化”
そして…横乗り期間が終わり、独り立ちして出てきたその新人。
誰?って思いました。
- 喋り方が完全に横着:「〜っすよね、マジっすか」「やってらんねーっすよ」
- 年上の先輩にも平気でタメ口:「あ、それオレやんないっす」
- 後輩にはキツく当たり:「お前さあ、何回言わせんの?」
- 構内でヘッドライトが眩しかったトラックに、ガンを飛ばすような目で睨みつける
- 今もそのチンピラ先輩とつるんで、まるで“自分も幅を利かせてる”と勘違いしてる
まるで“チンピラのコピー”。
あの素直だった新人は、たった1ヶ月で見事に変貌してしまいました。
トラック業界では“教える人間の人格”が全てを決める
この業界では、紙のマニュアルよりも「先輩の背中」を見て育つ文化があります。
だからこそ、誰が横乗りを担当するかは、非常に重要なんです。
人間は環境に染まります。
特に新人ドライバーのような素直なタイプは、教える人の言動をそのまま吸収してしまう。
横乗り担当が真面目で優しい人なら、同じように成長します。
逆に、横着で荒っぽい人間に任せてしまうと、“チンピラ化”するのは時間の問題。
これは本当に現場あるあるで、いろんな会社で見てきました。
勘違いドライバーの末路は意外と早い
その新人は今も先輩とつるんで、現場で威圧的な雰囲気を出していますが実は周囲のドライバーからはちょっと引かれているのが現実です。
そのうち、運行数も減らされていき、“幅を利かせていたつもりが、気づけば干されていた”なんてことにもなりかねません。
新人教育は“会社の未来”を左右する
運送業界は、常に人手不足と戦っています。
だからこそ、せっかく入ってきた新人をどう育てるかは、会社全体の未来に関わる重要なテーマです。
教育係を選ぶときは、運転技術や年数よりも、人間性と教育意識の高さを重視すべきです。
- 礼儀や社会常識を伝えられるか?
- 配車マンや客先と円滑にやれるか?
- 言葉遣いや態度に悪影響を与えないか?
新人ドライバーを“現場に馴染ませる”だけじゃなく、“一人前に育てる”という責任感がある人間こそ、教育担当にふさわしいと思います。
まとめ、素直な子ほど、育て方を間違えると取り返しがつかない
今回のケースは、教育を間違えるとどれだけ人が変わってしまうかの典型です。
真面目で素直な新人ほど、変な人に染まるとやっかいです。
最初は誰もが「期待の新人」だと思っていたのに、今では「ちょっと関わりたくない存在」になってしまった。
その原因は、たった1ヶ月の“横乗り期間”にあります。
もしこの記事を読んでくれているあなたが、運送業界で新人教育に関わる立場なら「どんな言葉で教えるか」だけでなく、「どんな姿を見せるか」まで気を配ってください。
それが、現場の雰囲気を守り、会社の未来を守る第一歩になると、僕は信じています。
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